いつもと同じように食事をしているはずなのに、なぜか食べ終わるのに時間がかかっていたり、口元を触ろうとすると嫌がったりすることはありませんか?こうした小さな変化に、飼い主様が違和感を覚えることはとても大切なことです。実はその裏に、顎の骨の異常や骨折といった重大なトラブルが隠れている可能性があります。
犬や猫の顎に起こる異常は、見た目では分かりにくい場合が多く、外傷や腫れといった分かりやすいサインが出ないまま進行することも少なくありません。そのため、「しばらく様子を見ていたけれど、実は痛みがひどくなっていた」「食べることが難しくなってから異常に気づいた」といったケースもよく見られます。
なかでも、顎の骨折(顎骨骨折)は、犬や猫の食事や生活の質に大きな影響を与える病態です。重症化する前に知識を持っておくことで、痛みやストレスを軽減できる可能性があります。
そこで今回は犬や猫の顎骨骨折について、原因や症状、診断や治療方法などをご紹介します。
■目次
1.犬や猫の顎骨骨折とは?
2.原因
3.こんな症状が見られたら要注意
4.診断方法
5.治療方法と当院の取り組み
6.まとめ
犬や猫の顎骨骨折とは?
顎の骨は、大きく分けて上顎と下顎から構成されており、食べ物をしっかりと噛む、飲み込む、歯を支える、舌の動きを助けるといった、日常生活において重要な役割を担っています。この顎の骨に骨折が起きると、強い痛みのために口を動かせなくなったり、うまく食餌を摂れなくなったりすることがあります。
顎骨骨折は決して稀なケガではなく、犬や猫の生活環境、年齢あるいは疾患の有無によっては誰にでも起こり得るものです。しかし、顔や顎は被毛に覆われており、骨折部位によっては外見に大きな変化が見られないこともあります。そのため、見た目だけでは判断しにくく、専門的な診察や画像検査を行うことで初めて骨折が発見されることも少なくありません。
原因
犬や猫の顎骨骨折の原因は多岐にわたります。まず代表的なのが、以下のような外傷によるものです。
・高い場所からの落下
・転倒
・交通事故
特に猫では、高い場所への上り下りが多いため、思いがけず高い所から落ちてしまうことで顎に強い衝撃が加わることがあります。
また、硬いおもちゃやフードを噛んだ際に顎の骨に強い負荷がかかり、骨折を引き起こすこともあります。丈夫に見える犬や猫の顎であっても、繰り返し強い力が加わるとダメージが蓄積し、やがて骨折へとつながることがあります。
さらに、見落とされがちですが、重要なのが歯周病との関連です。成犬や成猫に多く見られる歯周病は、歯を支えている顎の骨を徐々に弱くしてしまいます。歯周病が進行した状態で食餌を摂ったり、軽い衝撃を受けたりするだけでも、脆くなった骨が折れてしまうことがあります。
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こんな症状が見られたら要注意
顎骨骨折は外傷としてのサインが見えにくいため、行動やしぐさの変化を注意深く観察することが非常に重要です。以下のような症状が見られた場合には、早めの受診をおすすめします。
・食餌中にフードを口から落とす
・食べたがらない、食べ始めてもすぐにやめてしまう
・よだれが増える
・口の中から出血がある
・顎や顔を触られるのを嫌がる、または痛がる
・表情がこわばったり、急に機嫌が悪くなったりする
・口がうまく閉じられない
・顔の左右の形が違って見える
こうしたサインは、一見すると小さな異変に見えるかもしれません。しかし、骨折が疑われる重大な兆候であることもあります。
診断方法
顎骨骨折の診断には、視診や触診だけでは限界があります。被毛の下にある骨の状態は外からでは確認しづらいため、画像診断による正確な評価が重要になります。
当院では、一般的なレントゲン検査に加え、歯科専用のレントゲン装置を使用して、顎の骨の状態だけでなく、歯や歯周組織の異常も詳細に確認しております。歯周病の有無やその進行具合を含めて、顎全体を総合的に評価することで、原因を見落とすことなく、適切な治療計画を立てることができます。
顎骨骨折のように、治療の選択が犬や猫の生活の質に大きく影響する場合には、精密な診断こそがその後の回復の見通しを左右します。だからこそ、丁寧で専門的な検査が非常に大切なのです。
治療方法と当院の取り組み
顎骨骨折の治療は、骨折の場所やずれの程度、犬や猫の年齢、歯の状態、そして全身の健康状態に応じて大きく異なります。
骨のずれが大きく、食事や生活に支障が出ている場合には、外科的な処置によって骨を固定する必要があるケースもあります。一方で、骨折の範囲が限られており、犬や猫の体への負担を考慮する場合には、慎重な経過観察のもとで治癒を目指すこともあります。
なお、当院では外科・整形の知識に加え、歯科の専門性を活かした連携体制を整えております。歯科用レントゲンを用いた詳細な検査により、歯や顎の状態を正確に評価し、必要に応じてスケーリングや口腔ケアなどの専門的処置をご提案します。
また、抜歯など侵襲性の高い処置が必要と判断される場合でも、軟部外科と連携して安全性を高めた治療を行います。ただし、歯は一度抜いてしまうと元に戻らないため、できる限り抜歯を避ける方向で治療計画を立てることを重視しています。
治療方針を決定する際には、飼い主様の生活スタイルやご不安な点を丁寧にお伺いし、それぞれの犬や猫にとって最善の方法を一緒に考えていくことを大切にしています。
まとめ
顎骨骨折は、早期に発見し適切に対応することで、犬や猫の痛みや生活への負担を大きく軽減することが可能です。食事の様子や口元の違和感は、体からの重要なサインです。たとえ軽度に見えても、その裏に重篤なトラブルが隠れていることもあるため、慎重な観察と迅速な判断が求められます。
「少し気になるけれど、まだ様子を見てもいいのだろうか」と迷われる段階こそ、動物病院へのご相談を検討していただきたいタイミングです。顎の違和感や食事に関する変化に気づいたときには、早めに受診しましょう。
当院では、歯科用レントゲンによる詳細な検査と、外科・歯科の連携体制によって、犬や猫の顎骨骨折に対して的確かつ丁寧な診療を行っております。少しでも気になる症状がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
愛知県名古屋市守山区
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