犬や猫の肝細胞癌とは?|気づきにくい症状と手術・再発の考え方

突然、動物病院で「愛犬や愛猫の肝臓にがんが見つかりました」と説明を受けたとき、強い衝撃や不安を感じる飼い主様もいらっしゃるかと思います。手術はできるのか、すでに末期なのではないか、再発するのではないかと、さまざまな思いが一度に押し寄せるものです。

 

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。というのも、ある程度まで病気が進行しないと目立った症状が表れにくい特徴があるためです。そのため、症状に気づいた時点で「肝細胞癌」という悪性腫瘍がすでに進行しているケースもあります。

 

しかし、犬や猫の肝細胞癌は、腫瘍の大きさや広がり方、全身状態によって治療の選択肢や見通しは大きく異なります。そのため、まずは正しい情報を知り、落ち着いて現状を把握することが大切です。

 

今回は犬や猫の肝細胞癌について、原因や症状、診断・治療方法などをご紹介します。

 

■目次
1.犬や猫の肝細胞癌とは?どんな病気?
2.原因や特徴
3.こんな症状は要注意|初期から末期にみられる変化
4.診断方法|当院が大切にしている検査の考え方
5.治療方法|手術・高齢・再発の考え方
6.まとめ

 

犬や猫の肝細胞癌とは?どんな病気?

犬や猫の肝細胞癌とは、肝臓を構成する肝細胞から発生する悪性腫瘍の一つです。犬では比較的みられる腫瘍で、とくにシニア期に発見されることが多い傾向があります。猫では発生頻度は高くありませんが、発症することはあります。

 

また、肝臓にできる腫瘍には良性と悪性があります。良性腫瘍はゆっくりと大きくなることが多く、周囲へ広がりにくい特徴があります。それに対して肝細胞癌は悪性に分類され、増大したり他の部位に影響を及ぼしたりする可能性があります。

 

ただし、肝細胞癌にもさまざまなタイプがあります。「単発で限局しているタイプ」と「多発して広がるタイプ」などがあり、進行の仕方や予後には個体差があります。そのため、がんと診断されたからといって「がん=すぐに命に関わる」と決めつけるのではなく、腫瘍の性質を丁寧に評価することが重要です。

 

原因や特徴

犬や猫の肝細胞癌は、はっきりとした原因が分からないケースがほとんどです。加齢や慢性的な炎症が関与している可能性は指摘されていますが、確実な予防法が確立されているわけではありません。

 

実際には、健康診断で偶然見つかることもあります。血液検査で肝酵素の上昇が確認されたり、腹部超音波検査で腫瘤が見つかったりして、詳しい検査へ進む中で肝細胞癌と診断される場合があります。

 

一方で「最近よく寝ている」「食欲が少し落ちた」など、年齢による変化と思われやすい症状の陰に肝細胞癌が隠れていることもあります。高齢だから仕方がないと考えて様子を見るだけでなく、小さな体調の変化にも目を向ける姿勢が早期発見につながります。

 

こんな症状は要注意|初期から末期にみられる変化

肝細胞癌の初期は、ほとんど症状が表れないこともあります。そのため、日常生活の中で異変に気づきにくいのが特徴です。

 

進行に伴い、以下のような症状がみられることがあります。

 

・食欲の低下
・元気がない、動きたがらない
・体重減少
・嘔吐や下痢
・歯ぐきや白目が黄色くなる黄疸
・お腹が張ってくる

 

さらに病状が進んだ、いわゆる末期の段階では、腹水がたまったり出血しやすくなったりすることもあります。ただし、見た目の症状だけで末期と判断することはできません。血液検査や画像検査を組み合わせ、総合的に評価する必要があります。

 

気になる変化が続く場合には、早めに受診していただくことが重要です。早期に状態を把握できれば、手術を含めた治療の選択肢が広がる可能性があります。

 

診断方法|当院が大切にしている検査の考え方

犬や猫の肝細胞癌を診断するうえで、まず大切なのは飼い主様からのお話です。いつ頃から元気が低下したのか、体重はどのくらい変化したのか、嘔吐や下痢はあったのかといった情報は、診断の大きな手がかりになります。

 

検査では血液検査を行い、肝酵素や全身状態を確認します。そのうえでX線検査超音波検査およびCT検査を実施し、肝臓の大きさや腫瘤の有無を詳しく評価します。必要に応じて細胞診や組織検査を行い、腫瘍の性質をより正確に調べます。これらを組み合わせることで、診断の精度を高めています。

 

悪性腫瘍は再発や転移の可能性があるため、最初の診断がその後の治療方針や予後の見通しを左右します。

 

なお、当院の腫瘍科では、体表だけでなく肝臓などの内臓に発生した腫瘍についても総合的に評価しています。触診や血液検査に加えて画像検査や細胞診を組み合わせ、可能な限り正確な診断を目指しています。

 

治療方法|手術・高齢・再発の考え方

犬や猫の肝細胞癌の治療は、腫瘍の大きさや位置、転移の有無、そして全身状態によって異なります。腫瘍が一部に限局している場合には、外科手術が選択肢となります。肝臓は再生能力を持つ臓器であるため、切除可能な部位であれば手術によって良好な経過が期待できる症例もあります。

 

一方で、高齢の犬や猫では、心臓や腎臓など他の臓器の状態も慎重に評価しなければなりません。年齢のみで手術の可否を決めるのではなく、体への負担や術後の生活の質を総合的に考慮することが重要です。

 

なお、手術後も再発や転移の可能性がゼロになるわけではありません。そのため、定期的な検査による経過観察が欠かせません。状態によっては抗がん剤による内科治療を行ったり、放射線治療を検討したり、緩和ケアを取り入れたりすることもあります。

 

また、当院では外科診療に力を入れていますが、治療を行うことだけが目的ではありません。犬や猫がどのように過ごしていきたいか、飼い主様がどのような時間を大切にしたいかを丁寧に伺いながら、無理のない治療計画を一緒に考えております。

 

まとめ

犬や猫の肝細胞癌は、症状が分かりにくく発見が遅れやすい病気です。しかし、早期発見と正確な診断によって、手術をはじめとした治療の可能性が広がります。高齢だからと決めつけず、食欲や元気のわずかな変化にも目を向けることが大切です。

 

不安や疑問を抱えたままにせず、気になることがありましたらお早めにご相談ください。早期に対応することで、その子にとってより良い選択ができる場合があります。

 

なお、当院では腫瘍科としての専門性を活かしながら、診断から手術、内科治療、緩和ケアまで一貫して対応しています。飼い主様の想いに寄り添い、その子にとって最善と思える道を共に考えてまいります。

 

 

当院の腫瘍科の詳細はこちらのページをご覧ください

 

 

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