愛犬や愛猫が「いつもより元気がない」「呼吸が苦しそう」など、ちょっとした変化が見られたとき、多くの飼い主様が不安な気持ちになると思います。特に呼吸の異常は気付きやすい一方で、原因が分からないと心配が大きくなりやすいです。
実はこうしたサインの背景に、胸とお腹を隔てる横隔膜に異常が起き、臓器が胸腔内へ入り込んでしまう「横隔膜ヘルニア」が隠れていることがあります。見た目では判断できない病気でありながら、放置すると命に関わることもあるため、早期の受診と正確な診断が重要です。
今回は犬や猫の横隔膜ヘルニアについて、原因、症状、診断方法および治療方法などをご紹介します。
■目次
1.横隔膜ヘルニアとは?
2.症状
3.診断方法
4.治療方法と手術後のケア
5.まとめ
横隔膜ヘルニアとは?
横隔膜とは、胸部と腹部を分ける薄い筋肉の膜です。呼吸の際に上下に動き、肺を広げたり縮めたりする重要な役割があります。この横隔膜に穴や裂け目が生じると、肝臓、胃や腸などの腹腔内臓器が胸腔内へ入り込んでしまうことがあります。この状態を「横隔膜ヘルニア」と呼びます。
また、横隔膜ヘルニアには、以下の2種類があります。
<先天性横隔膜ヘルニア>
胎児の成長過程で横隔膜がうまく形成されず、生まれつき穴が開いている状態です。子犬や子猫の頃から呼吸が早い、運動を嫌がるなどの症状が見られることがありますが、成長してから症状が出て気付くケースもあります。
<後天性横隔膜ヘルニア>
交通事故や落下などの強い衝撃を受けた際に横隔膜が破れ、臓器が胸腔内へ移動してしまう状態です。外傷直後は目立った症状が出ないこともあり、「軽いケガだと思っていたのに、あとから呼吸が苦しくなってきた」というケースも珍しくありません。
どちらの場合も、肺が圧迫されて呼吸がしづらくなり、適切な治療を行わないと命に関わる状態へ進行する恐れがあります。
症状
横隔膜ヘルニアでは、臓器が胸腔内へ入り込み、肺や心臓が圧迫されることで以下のような症状が見られます。
・呼吸が早い、浅い、苦しそう
・元気がない、食欲が落ちる
・嘔吐を繰り返す
・胸が膨らんで見える、お腹がへこんで見える
・失神、チアノーゼ(舌や歯ぐきが紫色:重度の場合に見られる)
こうした症状は「疲れているだけ」と考えがちですが、内部で臓器が圧迫されているサインかもしれません。放置すると急激に悪化することもあるため、少しでも異変を感じた場合は早めに動物病院を受診することが大切です。
診断方法
診断では、まず丁寧な身体検査と聴診を行い、呼吸音や心音に異常がないか確認します。そのうえで、以下の画像検査を必要に応じて行います。
◆レントゲン検査
胸腔内に本来写るはずのない臓器が確認できるため、横隔膜ヘルニアの診断に非常に有効です。
◆超音波検査
臓器の位置や動きをリアルタイムで確認できます。
◆CT造影検査
重症度や損傷部位の詳細な評価に有用で、手術計画を立てる際にも役立ちます。
さらに、血液検査や尿検査などを合わせて実施し、全身状態を正確に把握します。
当院では「他院で原因が分からなかったケースでも、ここで見つけてもらえた」」といったお声をいただくことがあります。こうした背景には、丁寧な問診と、できる限り正確な情報を得るための検査体制があります。そのうえで、飼い主様の不安なお気持ちに寄り添いながら、納得していただけるよう、分かりやすい説明を心がけています。
検査について、ご不安なことやご不明点などがありましたら、お気軽にご相談ください。
治療方法と手術後のケア
横隔膜ヘルニアの根本的な治療方法は「外科手術」です。胸腔に入り込んだ臓器を元の位置へ戻し、横隔膜の裂け目を縫合して修復します。手術には全身麻酔が必要であり、呼吸や循環器の管理を慎重に行う必要があります。
また、術後は以下のようなケアが重要です。
・ICUでの酸素管理
・呼吸状態のモニタリング
・痛みや炎症のコントロール
・感染予防
当院では軟部外科の設備と体制を整えており、肝臓、腎臓、膀胱や消化管などの内臓疾患の手術にも幅広く対応しています。また、「手術が不安」という飼い主様も多いため、術前の説明から術後の経過まで丁寧にご報告し、安心して治療を受けていただけるよう努めています。
まとめ
横隔膜ヘルニアは外からは分かりにくい病気ですが、早期発見と適切な治療で助かる可能性が大きく変わります。「呼吸がいつもと違う」「元気がない」などの小さな変化でも、気になることがあればお気軽にご相談ください。
当院では、正確な診察と最新鋭の検査機器、そして軟部外科に強い体制をいかして、犬や猫の命を守る医療を提供しています。飼い主様に寄り添いながら、最善の方法を一緒に考える診療を大切にしています。
愛知県名古屋市守山区
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