「様子見」が危険なことも|犬や猫の肝葉捻転と早期治療の重要性

愛犬や愛猫が「昨日まで元気だったのに、急にぐったりしている」「食欲がなく、お腹を触ると嫌がる」と感じた経験はありませんか。はっきりとした理由が分からないまま体調を崩したり、短時間で状態が悪化したりすると、飼い主様は強い不安に包まれると思います。

 

実は、犬や猫には症状が目立たないまま進行し、ある日突然重篤な状態に陥る病気が存在します。その一つが「肝葉捻転(かんようねんてん)」です。発生頻度は高くないものの、進行が早く、命に関わる可能性がある緊急疾患です。

 

「もう少し様子を見てもいいのでは」と迷っている間に状態が悪化する場合もあります。そのため、いざというときに適切な判断ができるよう、あらかじめ肝葉捻転という病気を知っておくことが大切です。

 

今回は犬や猫の肝葉捻転について、原因や症状、診断・治療方法などをご紹介します。

 

■目次
1.犬や猫の肝葉捻転とは?
2.原因と発症しやすい背景
3.症状
4.診断方法
5.治療方法
6.まとめ

 

犬や猫の肝葉捻転とは?

肝臓は体の中でも大きな臓器で、いくつかの「肝葉」と呼ばれる部分に分かれています。栄養の代謝や有害物質の解毒、血液の貯蔵など、生命維持に欠かせない働きを担っています。

 

肝葉捻転とは、その肝葉の一部がねじれてしまい、血流が遮断される病気です。血液が流れなくなると、ねじれた部分の肝臓組織は短時間で強いダメージを受け、壊死へと進行するおそれがあります。

 

さらに、炎症や出血が腹腔内に広がると全身状態が急激に悪化します。そのため、犬や猫の肝葉捻転は早期診断と早期治療が極めて重要な疾患といえます。迅速な対応が、その後の経過を大きく左右します。

 

原因と発症しやすい背景

肝葉捻転の原因は、現在でも明確に特定できないケースが少なくありません。肝臓の位置や固定のゆるさ、体格や体の構造などが関与している可能性が考えられていますが、必ずしも特定の条件に限って起こるわけではありません。

 

犬と猫のいずれにも発症する可能性がありますが、一般的に多くみられる病気ではありません。しかし「若いから大丈夫」「これまで病気をしたことがないから安心」とは言い切れません。突然発症するケースもあるため、年齢や既往歴だけでは判断できない病気です。

 

そのため、年齢や既往歴だけで判断せず、日頃から体調の変化に目を向ける姿勢が早期発見につながります。

 

症状

犬や猫の肝葉捻転で表れる代表的な症状は、以下のとおりです。

 

・急に元気がなくなる
・食欲が低下する
・嘔吐する
・お腹を触ると嫌がる、丸くなって動きたがらない
・呼吸が荒くなる

 

これらの症状は急に強く表れる場合が多い一方で、初期には「なんとなく元気がない」「動きが鈍い」といったわずかな変化だけにとどまることもあります。そのため、はっきりとした異常が出るまで様子を見てしまい、受診が遅れてしまうケースもあります。

 

しかし、肝葉捻転は進行が早い病気です。違和感を覚えたり、いつもと違う様子が続いたりする場合は、慎重に経過を観察するだけでなく、早めに動物病院へ相談することが重要です。飼い主様が抱く小さな疑問が、命を守るきっかけになることもあります。

 

診断方法

犬や猫で肝葉捻転が疑われる場合、以下のような複数の検査を組み合わせて慎重に診断を行います。

 

◆血液検査

肝酵素の上昇や炎症の程度を確認し、全身状態や緊急性の有無を評価します。

 

◆超音波検査

肝臓の大きさや形の変化、内部構造の異常、血流の状態を観察します。

 

◆CT検査(CT造影検査)

ねじれている肝葉の位置や血流の途絶、周囲組織への影響を立体的に把握します。特にCT造影検査は、血流評価において重要な役割を果たします

 

なお、肝葉捻転は他の腹部疾患と似た症状を示す場合があります。そのため、血液検査や超音波検査、CT検査の結果を総合しながら慎重に診断を進める必要があります。正確な診断が、その後の治療方針を決定するうえで極めて重要です。

 

当院の軟部外科では、血液検査や尿検査、X線検査、超音波検査、CT造影検査などを組み合わせ、できる限り精度の高い診断に努めています。設備と経験を生かし、迅速かつ的確な判断を行う体制を整えております。

 

治療方法

肝葉捻転の治療は、ねじれてしまった肝葉を切除する外科手術が基本となります。まずは点滴を行ったり、循環状態を安定させたりしながら全身管理を徹底し、そのうえで速やかに手術へ移行します。

 

肝臓は再生能力の高い臓器であるため、適切なタイミングで処置を行えば、回復が期待できる症例もあります。ただし、重度の出血や全身状態の悪化がみられる場合は、より慎重な対応が求められます。

 

なお、当院の軟部外科では、肝臓をはじめ腎臓や膀胱、消化管などの内臓疾患に対する手術を行っております。これらの病気は症状が目立たないまま進行したり、急激に悪化したりする特徴があるため、迅速な判断と高い安全性が欠かせません。

 

また、手術と聞くと、不安を感じる飼い主様も多いと思います。当院では最新鋭の機器を備え、できる限り体への負担を抑えた安全な手術を目指しております。検査結果や治療方針、考えられるリスクについても丁寧にご説明し、ご理解とご納得を得たうえで治療を進めております。また、神経外科や胸部外科など高度な治療が必要な症例にも対応できる体制を整えております。

 

まとめ

犬や猫の肝葉捻転は決して多い病気ではありませんが、命に関わる可能性のある緊急疾患です。元気がない様子が続いたり、食欲が落ちたり、お腹を気にするしぐさがみられたりする場合は、早めに動物病院を受診しましょう。早い段階で適切な検査や治療につなげることが、犬や猫の命を守る大切な一歩になります。

 

なお、当院ではCT検査を含む各種検査体制と軟部外科の専門的な手術対応により、犬や猫の肝葉捻転の診断と治療に力を入れています。不安な点がありましたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

 

 

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