犬のリンパ腫とは?原因・症状・治療法をわかりやすく解説

最近、愛犬に「食欲や元気がない」「首元や脇が腫れているように感じる」などの変化を感じたことはありませんか?

これらの症状は、加齢や季節の変わり目による体調不良と見過ごされがちですが、実は「リンパ腫」と呼ばれる血液のがんにおける初期のサインである可能性もあります。リンパ腫は進行が早く、放置すると治療が難しくなるため、早期の発見と適切な治療がとても大切です。

今回は犬のリンパ腫について、原因や症状、診断の流れ、治療方法、そして当院の取り組みなどを解説します。

 

■目次
1.犬のリンパ腫ってどんな病気?|命に関わる「血液のがん」
2.原因
3.気づきやすい症状と進行ステージ|こんな変化に注意
4.診断方法
5.治療方法|抗がん剤治療が基本に
6.まとめ

 

犬のリンパ腫ってどんな病気?|命に関わる「血液のがん」

リンパ腫とは、免疫機能を担う「リンパ球」と呼ばれる細胞ががん化し、全身のリンパ組織に異常な増殖を起こす病気で、血液に関わる悪性腫瘍の一つです。

犬で最も多く見られるのは「多中心型リンパ腫」というタイプで、これは首や脇の下、足の付け根など、身体の表面にあるリンパ節が大きく腫れるのが特徴です。この腫れは痛みを伴わないことが多く、初期では犬自身も普段通りに過ごすため、飼い主様が見過ごしてしまうケースも少なくありません。

しかし、病気が進行すると、腫瘍はリンパ節以外の臓器にも広がり、深刻な全身症状へとつながってしまいます。命に関わる病気であるため、早期発見と適切な対応がとても大切です。

 

原因

リンパ腫が発症する原因は、明確には解明されていませんが、複数の因子が関与していると考えられています。代表的なものとしては、以下が挙げられます。

 

・遺伝的な体質
・特定のウイルス感染
・免疫機能の異常

 

一般的には10歳以上の中高齢犬で発症しやすいといわれていますが、若い年齢でも発症することがあります。また、ゴールデン・レトリバーやボクサーといった特定の犬種に発症が多く見られる傾向があるため、これらの犬種を飼育している飼い主様は、特に注意深く日々の体調を観察することをおすすめします。

 

気づきやすい症状と進行ステージ|こんな変化に注意

犬のリンパ腫は、初期にはほとんど症状が見られないか、あっても軽度であるため、日常生活の中では気づかれにくい病気です。ただし、以下のような症状が見られた場合には注意が必要です。

 

<初期症状>

・首や脇の下、足の付け根などのリンパ節の腫れ
・元気の低下
・食欲の低下
・体重の減少

 

これらの症状は、加齢やストレスとも捉えられることが多いため、見過ごされやすい傾向があります。

しかし、病気が進行すると、以下のような全身症状が現れてくることがあります。

 

<進行時に現れやすい症状>

・嘔吐
・下痢
・貧血(歯ぐきが白っぽくなる、ふらつきが出る)
・呼吸困難

 

また、犬のリンパ腫は進行度合いによって、以下の5つのステージに分類されます。

 

◆ステージ1

1つのリンパ節または1つの組織に限って存在する(骨髄を除く)

 

◆ステージ2

近くのリンパ節へ転移している

 

◆ステージ3

全身のリンパ節に転移している

 

◆ステージ4

肝臓や脾臓などの臓器にも広がっている

 

◆ステージ5

血液にまでがん細胞が入り込み、他の臓器に転移している

 

さらに、症状の有無により「サブステージA(症状なし)」「サブステージB(症状あり)」に分類されます。

このステージ分類は、治療方針や予後の見通しを立てる上で非常に重要です。呼吸器や循環器に関わる症状が出ている場合には、リンパ腫以外の病気(心疾患など)との鑑別も必要となります。

 

診断方法

犬のリンパ腫は、見た目の症状だけでは確定診断ができないため、正確な診断には以下のような検査を組み合わせて行う必要があります。

 

<初期診断>

・身体検査
・血液検査
・超音波検査
・細胞診(細い針でリンパ節から細胞を採取する検査)

 

<追加検査>

・病理組織学的検査(細胞の性質をより詳しく分析する検査)
・CT検査(体内の状態をより詳細に把握するための画像検査)

 

なお、当院では他院からのセカンドオピニオンにも多数対応しています。「他の獣医師の意見も聞いてみたい」といったご希望がある場合には、お気軽に当院までご連絡ください。

 

治療方法|抗がん剤治療が基本に

犬のリンパ腫に対する治療は、抗がん剤を用いた化学療法が基本となります。中でも「CHOP療法」と呼ばれる複数の抗がん剤を併用する方法が一般的です。これにより、がん細胞の活動を抑え、症状の改善や「寛解(かんかい)」を目指します。

ここでの「寛解」とは、「がんが完全になくなった状態」ではなく、「がん細胞の活動が一時的に抑えられている状態」を指します。つまり、完治という意味ではありませんが、寛解状態が長く続けば、普段と変わらない生活を送ることができます

また、抗がん剤による副作用に不安がある飼い主様も少なくありません。人の治療では強い副作用が問題になることがありますが、犬の場合は比較的軽度で済むことが多く、治療中でも普段通りの生活を送れるケースもあります。

なお、当院では犬の生活の質(QOL)を重視し、治療方針のご相談や副作用への対応、緩和ケアや在宅でのサポートまで、飼い主様の想いに寄り添った治療をご提案しています。

 

まとめ

犬のリンパ腫は、中高齢の犬によく見られる血液のがんであり、進行が早いため早期発見・早期治療が極めて重要です。初期の段階では症状がわかりにくいため、日頃から犬の様子をよく観察し、「いつもと違う」と感じたら、迷わず動物病院へご相談ください。

当院では腫瘍科を設け、専門的な知識と豊富な経験を持つ獣医師が、飼い主様のお話を丁寧に伺いながら、正確な診断と最適な治療をご提案しております。抗がん剤治療だけでなく、手術や緩和ケアにも対応可能な体制を整えており、愛犬との大切な時間を少しでも長く穏やかに過ごせるよう、全力でサポートいたします。

気になる症状がある場合や、他院での診断に不安がある場合も、お気軽に当院までご相談ください。

 

 

当院の腫瘍科の詳細はこちらのページをご覧ください

 

 

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