子宮蓄膿症とは、犬や猫の子宮の中に膿がたまってしまう病気です。この病気は中高齢のメスに多く、避妊手術を行っていないと発症するリスクが高まることが知られています。避妊手術で卵巣を摘出していれば問題ありませんが、子どもを作ることを考えている場合には注意が必要です。
今回は犬と猫の子宮蓄膿症について、当院での治療法を中心にご紹介します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法
6.まとめ
原因
子宮蓄膿症は、猫に比べて犬に多く見られる病気です。発症に関わる要因としては、以下が挙げられます。
・ホルモンの影響:プロゲステロンという女性ホルモンが分泌されることで、子宮の内膜が厚くなるとともに、細菌感染への抵抗性が弱まる
・細菌感染の影響:細菌(主に大腸菌)が子宮に感染する
・避妊手術:子宮蓄膿症は子宮の病気であるが、避妊手術によりその原因となる性ホルモンを分泌する卵巣を摘出していない犬や猫で起こる
症状
子宮蓄膿症の初期には、以下のような症状が現れます。
・元気や食欲がなくなる
・脈や呼吸が速くなる(頻脈・頻呼吸)
・多飲多尿
・おなかを痛がる
病気が進行すると、子宮が破裂することで細菌がおなかの中にあふれ出て、腹膜炎や敗血症といった危険な状態に陥り、治療が遅れると命を落とすケースがあります。
また、子宮蓄膿症は開放性と閉鎖性に分類されます。
<開放性>
陰部から赤茶色の分泌物が漏れ出ることが特徴的です。
<閉鎖性>
分泌物が見られないため、子宮に膿がたまりやすく重症化しやすいだけでなく、異常に気づきにくいため、発見が遅れる可能性が高くなります。
診断方法
子宮蓄膿症の診断では、身体検査、膣垢塗沫検査、血液検査、画像診断(X線や超音波検査)を実施します。また膣からの分泌物を採材して一部を細菌培養することで、適切な薬(抗生剤)の選択に役立てます。
治療方法
子宮蓄膿症と診断された場合、ほとんどの犬や猫で外科的治療(手術)が必要になります。前述したとおり、子宮蓄膿症は緊急性が高く、少しでも治療が遅れると死に至る危険性もあるため、早めに対処することが重要です。
手術では、卵巣子宮全摘出術という方法を用います。術前検査で全身状態をチェックし、持病がなく麻酔のリスクが高くないようであれば開腹手術を選択します。
開腹手術ではおなかを切り、卵巣と子宮を同時に摘り出します。術中は体温、脈の増減や血圧、呼吸の状態などを確認しつつ、変化があればすぐに薬を投与できるように準備しておきます。
一方で、内科的治療を併用するケースもあります。特に麻酔のリスクが高い犬や猫に対しては、ホルモン剤(アリジン)による治療で状態を改善してから手術に踏み切るという選択肢もあります。持病がある場合は急いで手術を行うのではなく、内科的治療で全身改善させてから手術を行う方がリスクは減少するため、当院ではそのような方法も選択肢として取っています。
予防法
子宮蓄膿症の発症を防ぐには、避妊手術を実施する必要があります。適切な時期については生後7か月以降のなるべく早い時期に実施することをお勧めしています。避妊手術は子宮蓄膿症だけでなく、乳腺腫瘍や子宮・卵巣の腫瘍の発生を予防できるため、早めに実施することが重要です。
また、定期的な健康診断を受けることで、愛犬や愛猫の健康状態をこまめにチェックすることも必要不可欠です。
まとめ
子宮蓄膿症は未避妊の中高齢犬でよく遭遇する病気です。進行が早く、亡くなってしまうこともあるため、避妊手術をしていない場合には早期に発見して動物病院を受診することが重要です。
治療は手術が中心になりますが、当院では外科治療に力を入れており高度な獣医療を提供しております。お困りの際はお気軽にご来院ください。
<参考文献>
Pyometra in Small Animals 2.0 – ScienceDirect
愛知県名古屋市守山区
犬や猫、うさぎ、小鳥、ハムスター、フェレットなどの幅広い動物の診療を行う動物病院
『小幡緑地どうぶつ病院』
TEL : 052-778-9377