突然、愛猫が元気をなくして食欲が減ったり、体調が悪そうに見えたりすると、とても心配になりますね。こうした症状の中には「FIP(猫伝染性腹膜炎)」という病気が潜んでいる可能性があります。この病気は致死率がとても高いとされていますが、治療法の進歩により、近年では治療の可能性が広がっています。
今回は猫のFIPについて、症状や治療方法、予防のポイントなどを詳しく解説します。
■目次
1.FIPとはどんな病気?
2.FIPの主な症状とは?
3.FIPの診断方法について
4.FIPの治療法と予後
5.まとめ:早期発見のために大切なこと
FIPとはどんな病気?
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルスが変異することで発症する病気です。通常の猫コロナウイルスは無害ですが、これが変異するとFIPウイルスとなり、猫の体内で強い炎症を引き起こします。
FIPは特に若い猫(2歳未満)に多く見られます。感染経路としては、主に糞便を介した接触感染が挙げられます。
FIPの主な症状とは?
FIPには「ウェットタイプ」、「ドライタイプ」、「混合タイプ」の3つのタイプがあります。それぞれの特徴的な症状は以下の通りです。
<ウェットタイプ>
腹部や胸部に液体が溜まり、お腹の膨らみや呼吸困難が見られます。進行が早いのが特徴です。
<ドライタイプ>
内臓や神経系に結節ができ、発熱や体重減少、食欲不振が主な症状です。進行がゆっくりである場合が多いです。
<混合タイプ>
上記2つの症状が混在するタイプで、診断が難しいケースもあります。
症状は個体によって異なりますが、初期には、元気がない、食欲が減る、お腹が膨れるなどが現れることがあります。そのため、普段からの観察が重要です。
FIPの診断方法について
FIPの診断には、獣医師による総合的な判断が必要です。一つの検査だけでは確定診断が難しいため、複数の検査を組み合わせて診断します。
【問診】
飼い主様から猫の症状や生活環境、過去の病歴などを詳しく聞き取ります。特に、多頭飼育環境やストレスの有無などが重要な情報となります。
【身体検査】
発熱や体重減少、腹部の膨らみなどを確認します。
【血液検査】
<CBC(完全血球計算)>
貧血や白血球数の異常を確認します。FIPの猫では、非再生性貧血やリンパ球減少が見られることがあります。
<生化学検査>
高グロブリン血症や低アルブミン血症が特徴的です。A/G比(アルブミン/グロブリン比)が低い場合、FIPの可能性が高いとされます。
<抗体価検査>
コロナウイルスの抗体価を測定する検査で、FIPの可能性を示唆する指標のひとつとなります。しかし、抗体価が高い場合でもFIPと確定することはできず、逆に抗体価が低い場合でもFIPを完全に否定することはできません。そのため、あくまで補助的な検査として用いられ、他の検査結果と総合的に判断することが重要です。
【画像診断】
<超音波検査>
腹部や胸部の液体貯留を確認します。特に、腹水や胸水の存在がFIPの診断に役立ちます。
<レントゲン検査>
胸部や腹部の異常を確認します。胸水や心嚢水の貯留が見られることがあります。
【滲出液の検査】
<リバルタ試験>
腹水や胸水のサンプルを用いて、FIP特有の滲出液かどうかを確認します。陽性の場合、滲出液が雨だれのようにゆっくりと底に落ちる特徴があります。また、腹水や胸水を採取し、FIPに特徴的な滲出液であるかを調べます。
【その他の検査】
<PCR検査>
FIPウイルスの遺伝子を検出するための検査です。確定診断には至らないこともありますが、補助的な情報として重要です。
FIPの治療法と予後
従来の治療法では、対症療法が主でしたが、近年では新しいFIP 治療薬(抗ウイルス薬)が出てきており、半数程度の猫に有効であったという報告もあります。治療は長期間かかり、3ヶ月ほどが予想されます。
治療にかかる期間や費用について、獣医師とよく話して、飼い主様も理解しておきましょう。当院でもFIPの治療が可能です。以前は治療ができないとされていた病気ですが、新しい薬もあるため、まずは諦めずに受診してください。
まとめ:早期発見のために大切なこと
定期的な健康管理は、愛猫の健康を守るうえで特に重要です。気になる症状が見られた際は、早めに動物病院を受診することをお勧めします。治療を早期に開始することで、より高い治療効果が期待できます。
また、FIPは治療可能な病気として認識されつつあります。そのため、飼い主様ができる日常的な予防や観察のポイントを押さえ、愛猫の健康を守ることが大切です。
特に、新しく家族に迎えたばかりの若い猫で気になる症状がある場合は、迷わず早めに動物病院に相談してください。日々のケアや定期的な健康チェックを習慣化し、早期発見・早期治療を心がけることで、愛猫が健やかに暮らせるサポートをしていきましょう。
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