犬の胆嚢粘液嚢腫とは?|見逃しやすい症状と治療・手術の選択肢

最近、愛犬の様子が「なんとなく元気がない」「食欲が落ちてきた」と感じたことはありませんか?こうした小さな変化は、年齢のせいだと考えて見過ごしてしまいがちですが、実は体の中で病気が進行しているサインかもしれません。

その中でも特に注意が必要なのが「胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)」という病気です。この疾患は初期にはほとんど症状が現れず、気づいたときには重症化しているケースもあるため、早期発見が非常に重要です。

今回は、犬の胆嚢粘液嚢腫について、原因、症状、当院での診断方法や治療方針までを詳しくご紹介します。

 

■目次
1.胆嚢粘液嚢腫ってどんな病気?
2.こんな症状はありませんか?胆嚢粘液嚢腫のサイン
3.原因と発症リスクが高い犬種
4.診断方法|当院での検査について
5.治療方法
6.まとめ|愛犬の「いつもと違う」を見逃さないで

 

胆嚢粘液嚢腫ってどんな病気?

胆嚢(たんのう)は、肝臓で作られた「胆汁(たんじゅう)」という消化液を一時的に貯めておき、食事のタイミングに合わせて腸へ送り出すことで、脂肪の消化を助ける役割を担っている臓器です。

胆嚢粘液嚢腫とは、この胆汁がゼリー状に固まり、正常に排出されずに胆嚢の中に溜まってしまう病気です。胆嚢内部に粘液状の胆汁が蓄積し、胆嚢が著しく腫れてしまうことがあります。

この病気は無症状のまま進行することも多く、ある日突然、胆嚢が破裂して腹膜炎を起こすなど、命に関わるような状態になることもあります。そのため、普段からの健康管理が非常に重要です。

 

こんな症状はありませんか?胆嚢粘液嚢腫のサイン

胆嚢粘液嚢腫の特徴としては、前述したとおり初期段階ではほとんど症状が現れないという点です。そのため、健康診断や他の病気の検査を通じて偶然見つかるケースも少なくありません。

しかし、病気が進行すると胆嚢に炎症が起きたり、胆汁の通り道である胆管が詰まったりすることで、以下のような症状が現れることがあります。

 

・食欲不振
・嘔吐
・元気の消失
・黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)
・腹痛(触られるのを嫌がるなど)

 

特に食欲不振や元気消失といった症状は、年齢によるものと誤解されがちです。そのため、自己判断せず、少しでも気になる様子が見られたら早めに動物病院を受診することが大切です。

 

原因と発症リスクが高い犬種

胆嚢粘液嚢腫の正確な原因はまだ明らかにされていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。

具体的には、以下のような病気との関連が指摘されています。

 

・高脂血症
・慢性胆管肝炎
・甲状腺機能低下症
・クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
・糖尿病
・肥満などの体質的要因

 

また、発症リスクが高いとされる犬種も報告されています。特に以下の犬種に多い傾向があります。

 

・シェットランド・シープドッグ(シェルティー)
・ミニチュア・シュナウザー
・アメリカン・コッカー・スパニエル

 

このように、病気の背景にはさまざまな要素が複雑に絡み合っています。そのため、飼い主様は犬の体質や生活環境、年齢などをふまえて、日頃から食生活や体重管理に注意を払いながら健康チェックを行うことが大切です。

 

診断方法|当院での検査について

胆嚢粘液嚢腫を正確に診断するためには、複数の検査を組み合わせて総合的に判断する必要があります。当院では以下のような検査を実施しています。

 

<問診・身体検査>

飼い主様から日常の様子をお伺いし、黄疸や腹痛の有無などを確認します。

 

<血液検査>

肝臓や胆嚢の数値(ALPやγ-GTPなど)をチェックし、胆汁うっ滞の兆候を探ります。

 

<超音波検査>

胆嚢内部の様子をリアルタイムで確認する検査です。胆嚢粘液嚢腫では“キウイの輪切り”のような特徴的な画像が見られることが多く、診断において非常に重要な検査となります。

 

<X線検査・CT造影検査>

必要に応じて実施し、他の疾患との鑑別や、より詳細な病変の確認を行います。

 

当院では、こうした検査を丁寧に行い、より精度の高い診断を心がけています。また、他院からのセカンドオピニオンも数多く受け入れており、病気の進行度や治療方針に不安を抱えていらっしゃる飼い主様にも、安心してご相談いただける体制を整えております。

分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

治療方法

胆嚢粘液嚢腫の治療方法は、進行度や症状の有無によって大きく異なります。

 

<軽度で症状がない場合>

内科的治療を選択することがあります。胆剤と呼ばれる薬を用いて胆汁の排出を促したり、低脂肪の食事療法を併用したりして、経過を観察します。また、糖尿病や高脂血症といった併発疾患の管理も非常に重要です。

 

<重度で症状が強い場合>

胆嚢の破裂や重度の炎症が見られるケースでは、外科手術による胆嚢摘出が必要になることがあります。胆嚢が破裂してからの手術は救命率が著しく低下すると言われています。そのため早期に発見し、必要であれば早期に摘出することがより良いでしょう。

 

当院では、胆嚢粘液嚢腫を含めた軟部外科の手術に力を注ぎ、多くの症例に対応しております。また、手術では安全を第一に考え、犬の身体にかかる負担を最小限に抑える方法を選択しています。

さらに、術後の体調管理から再発防止まで丁寧にサポートし、飼い主様と一緒にその後のケアを行っていく体制を整えております。

 

まとめ|愛犬の「いつもと違う」を見逃さないで

胆嚢粘液嚢腫は初期には気づきにくい病気ですが、進行が早く命に関わる可能性もあるため、飼い主様が日常の小さな変化を見逃さないことが非常に大切です。

「最近食欲がない」「少し元気がない」といった些細な変化も、重要なサインかもしれません。年齢や持病のせいだと自己判断せず、気になることがあれば早めに動物病院に相談してください。

当院では、飼い主様のお話を丁寧にお伺いし、最適な検査と治療方法をご提案しております。特に胆嚢粘液嚢腫のような病気では、早期の診断と適切な治療が鍵となります。

手術に対してご不安を感じている飼い主様もいらっしゃるかと思いますが、当院では最新の医療機器と豊富な経験を活かし、安全かつ負担の少ない手術を心がけています。ご不明点などありましたら、まずはお気軽にご相談ください。

 

 

当院の軟部外科の詳細はこちらのページをご覧ください

 

 

<参考文献>
Gallbladder mucocoele: A review – PMC (nih.gov)

 

 

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