「最近、愛犬の顔周りの毛が薄くなってきた気がする」「かゆそうに目のまわりをこすっている」そんな日常のちょっとした変化に気づいて、不安を感じたことはありませんか。
一見すると軽い皮膚炎のようにも見えますが、実は「ニキビダニ(=デモデクスまたは毛包虫)」と呼ばれる常在ダニが関係しているケースがあります。このニキビダニが異常に増殖することで起こる皮膚病が「ニキビダニ症(アカラス症または毛包虫症)」です。
この疾患は、自然に治ることが難しい場合も多く、放置すると症状が悪化することもあります。そのため、早期に正確な診断と治療を受けることが大切です。
今回は、犬のニキビダニ症について、原因や症状、治療方法、再発予防などをご紹介します。
■目次
1.ニキビダニ症とはどんな病気?
2.原因と発症のきっかけ
3.主な症状と見分け方
4.当院の診断・治療方法(皮膚科診療の特徴)
5.再発を防ぐためのケアと生活の工夫
6.まとめ
ニキビダニ症とはどんな病気?
ニキビダニ症は、犬の皮膚に存在する「ニキビダニ(デモデクス)」という微細なダニが異常に増殖することで発症する皮膚疾患です。また、健康な犬の皮膚にも常在しており、通常は問題を起こしません。
しかし、免疫力が低下するとダニが過剰に繁殖し、皮膚に炎症や脱毛などの症状を引き起こします。また、発症しやすい部位には以下のような箇所が挙げられます。
・顔
・目のまわり
・口まわり
・前肢(特に指先)
これらの部位から症状が現れ始めることが多く、進行すると全身に症状が広がる場合もあります。また、稀に猫にも発症することはありますが、犬の方が圧倒的に多く報告されています。
原因と発症のきっかけ
ニキビダニは、主に母犬から子犬へと授乳期に受け継がれる常在寄生虫で、人間や他の犬への感染を心配する必要はほとんどありません。ただし、ニキビダニ症として発症するかどうかは、犬自身の免疫状態に大きく関わっています。
以下のような状況では、免疫力の低下が起こりやすく、ニキビダニが増殖して症状が現れることがあります。
・子犬期で免疫機能が未発達な場合
・高齢で免疫力が落ちてきた場合
・持病やその治療の影響で免疫が抑制されている場合
・強いストレスを受けている場合
・栄養バランスが乱れている場合
・ホルモンバランスの異常がある場合
「毎日清潔にしているのにかゆがる」「皮膚の赤みが治らない」といった症状がある場合は、外部の汚れや感染が原因ではなく、こうした体内の変化が影響している可能性があります。
主な症状と見分け方
ニキビダニ症は、以下のように段階的に進行する特徴的な症状があります。
<初期に見られる症状>
・顔や目のまわりの部分的な脱毛
・皮膚の赤み
・軽度のかゆみ
<進行した場合の症状>
・皮膚が厚くゴワつく
・色素沈着による黒ずみ
・フケやかさぶたの増加
・化膿や膿の排出
・強いかゆみ
ただし、これらの症状は「脂漏症」「膿皮症」や「アトピー性皮膚炎」など他の皮膚病とも非常によく似ています。そのため、見た目だけでニキビダニ症と判断するのは困難であり、誤った自己判断が症状の悪化を招く恐れがあります。
また、自然に治ることが少ない病気でもあるため、少しでも気になる症状がある場合には、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
当院の診断・治療方法(皮膚科診療の特徴)
当院では、皮膚疾患に対して正確な診断を行い、原因を見極めたうえで適切に治療することを大切にしています。見た目だけで判断するのではなく、必要な検査を丁寧に進めることで、症状の改善だけでなく再発予防にもつながるよう心がけています。
<診断の流れ>
ニキビダニ症の診断は、以下のような流れで行います。
①皮膚の検査
皮膚掻爬検査(スクレーピング)や抜毛検査を行い、顕微鏡でニキビダニの有無や数を確認します。
②追加検査による鑑別
症状や状態に応じて、アレルギー検査や皮膚生検を実施し、他の皮膚病との違いを見きわめます。
<治療方法>
犬の体質や症状の程度に応じて、以下の治療を組み合わせて行います。
・内服薬(駆虫薬):イソオキサゾリン系などのニキビダニ駆除に効果が期待される薬剤
・注射薬:上記治療に反応しない場合はドラメクチンという製剤を併用
・外用薬:炎症や赤みの抑制を目的とした薬剤
・抗生剤・抗炎症薬:二次感染や強い炎症がある場合に使用
・薬用シャンプー療法:皮膚の清潔を保ち、炎症を抑えるケア
なお、当院では飼い主様のご不安やご質問にも丁寧にお応えし、生活背景やこれまでの治療歴もふまえたうえで治療計画を立案します。検査内容や治療方法について分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。
再発を防ぐためのケアと生活の工夫
ニキビダニ症は治療によって改善する病気ですが、免疫力の変化により再発してしまうこともあります。そのため、治療後も以下のように、皮膚環境を整えるケアや生活習慣の見直しが大切です。
<皮膚にやさしいスキンケア>
定期的なシャンプーにより皮膚を清潔に保つことが重要です。ただし、合わないシャンプーを使うと皮膚が悪化する可能性もあるため、犬の皮膚状態に合った製品を獣医師と相談しながら選ぶようにしましょう。
<食事の見直しで皮膚をサポート>
皮膚のバリア機能を維持するためには、栄養バランスのとれた食事が不可欠です。必要に応じて、皮膚の健康維持に特化した療法食を取り入れることもあります。
<ストレスの少ない生活環境>
環境の変化や生活リズムの乱れは、犬の免疫力に影響を及ぼすことがあります。安心して過ごせる空間づくりや、ストレスを減らす工夫を心がけましょう。
<定期的なチェックと早期相談>
「毛が少し薄くなってきた」「触ると皮膚がザラザラする」など、わずかな変化でも早めにご相談いただくことで、重症化を防ぎ、治療期間を短くできる可能性があります。また、日頃からスキンシップをとりながら皮膚の状態を確認することで、小さな異変にも気づきやすくなります。
まとめ
ニキビダニ症は、見た目が軽度の皮膚炎に思えても、痒みが激しく進行しやすく自然に治ることが難しい皮膚病です。ただし、早期に治療を開始することで、かゆみや脱毛の改善が期待でき、犬が快適に過ごせる健康な皮膚状態を取り戻すことができます。
当院では、症状の背景までしっかりと見極め、犬の体質や生活環境に合わせた治療プランをご提案しています。「少し気になる」という段階でもお気軽にご相談ください。
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