目の乾きやしょぼつきに注意!犬と猫のドライアイ(乾性角結膜炎)について

最近、愛犬や愛猫が「目を細めることが増えた」「目やにが多い気がする」といった変化に気づいたことはありませんか。このような症状が見られた場合、“ドライアイ(乾性角結膜炎)”を起こしている可能性があります。

犬や猫のドライアイは、涙の量や質が低下することで目の表面が乾き、炎症を引き起こす病気です。一見すると軽いトラブルのように思うかもしれませんが、放置すると角膜に深い傷がつき、視力の低下や場合によっては失明につながることもあります。

そのため、目の健康を守るためには、飼い主様が早期のサインに気づき、適切な検査と治療を受けることがとても重要です。

今回は犬や猫のドライアイ(乾性角結膜炎)について、原因や症状、検査や治療方法などを解説します。

 

■目次
1.犬と猫のドライアイ(乾性角結膜炎)とは?
2.ドライアイの主な原因
3.症状
4.ドライアイの診断方法と検査の流れ
5.治療方法と日常ケア
6.まとめ

 

犬と猫のドライアイ(乾性角結膜炎)とは?

まず、涙には以下のような役割があります。

 

・目の表面を潤す
・細菌や埃を洗い流す
・感染から守る
・角膜に栄養を届ける

 

このように涙は、健康な視覚を保つために欠かせません。

ドライアイは、こうした涙の“量”または“質”が低下することで、目の表面が乾燥し炎症が起きている状態を指します。乾燥した角膜は傷つきやすく、慢性化すると治りにくくなるため注意が必要です。

また、犬ではシーズー、チワワ、パグ、フレンチブルドッグなど、目が大きく乾燥しやすい犬種に多く見られます。
猫の場合は、慢性結膜炎やヘルペスウイルス感染をきっかけに発症するケースがよくあります。

なお、ドライアイは進行性の病気であるため、放置せず「少し気になる」といった段階で動物病院を受診することが大切です。

 

ドライアイの主な原因

ドライアイには以下のような原因があり、複数が重なって発症することもあります。

 

<免疫の異常(免疫介在性)>

最も多い原因とされ、免疫の異常によって涙腺が攻撃されてしまうタイプです。涙の分泌が徐々に低下し、慢性的な乾燥と炎症につながります。

 

<加齢・ホルモン異常>

高齢になると涙腺の働きが弱まりやすくなります。また、甲状腺機能低下症などのホルモン異常もドライアイの一因となります。

 

<薬の副作用>

一部の薬(鎮痛薬・抗けいれん薬・一部の抗生物質など)は涙腺の働きを弱めることがあり、長期服用で発症するケースがあります。

 

<まぶたの異常・環境要因>

まぶたがしっかり閉じない、風が強く当たる環境、暖房による乾燥など、涙の蒸発が促進される状態もドライアイを悪化させます。

 

このように原因は1つとは限らず、「何が背景にあるのか」を見極めるには専門的な検査が必要です。

 

症状

ドライアイを起こすと、以下のような症状が見られることがあります。

 

・粘り気のある目やにが増える
・涙が少ない、目が乾いて見える
・角膜が白っぽく濁る
・目をしょぼつかせる、まばたきが多くなる
・前足で目をこする
・片目を開けにくそうにする
・なんとなく元気がない

 

また、犬や猫は痛みを隠すことが多いため、こうした日常の仕草の変化が重要なサインになります。そのため、普段から愛犬や愛猫の様子を観察しておくことで、小さな異変にも早く気づけるようになります。

 

ドライアイの診断方法と検査の流れ

診断には、以下のような検査を実施します。

 

<シルマーティアテスト(涙の量を測定)>

小さな専用紙をまぶたの端に挟み、一定時間で染み込んだ長さを測定します。ドライアイ診断の基本となる検査です。

 

<フルオレセイン染色検査(角膜の傷の確認)>

蛍光色素を点眼し、角膜の傷の有無を確認します。乾燥でできた細かい傷も見つけることができます。

 

<スリットランプ検査・眼圧検査・眼底検査>

角膜や結膜の炎症の程度、眼圧、さらには眼底の状態まで総合的に評価します。角膜潰瘍や併発する眼疾患の早期発見に欠かせない検査です。

 

犬の角膜潰瘍の症状や治療方法についてより詳しく知りたい方はこちら

 

また、「涙の量が普段よりも少ないだけだから問題ない」と自己判断してしまうと、知らないうちに角膜に深い傷ができてしまうことがあります。そのため、症状が軽いうちに検査を受けていただくことが大切です。

なお、当院では飼い主様からの細かな生活情報を伺いながら、眼科専用の機器を使って正確な診断を行っています。検査について、不明点や疑問などありましたら、お気軽にご相談ください。

 

治療方法と日常ケア

ドライアイの治療は、以下の方法で実施します。

 

・免疫抑制剤点眼(シクロスポリンなど)で涙の分泌を促進
・人工涙液や保湿ジェルで乾燥を防ぐ
・抗生物質点眼で感染の治療
・抗炎症剤点眼で炎症を抑える

 

なお、ドライアイは慢性疾患であるため、改善が見られても途中で治療を中断してしまうと再発しやすくなります。そのため、継続したケアがとても重要です。

 

<ご家庭でできるケア>

ドライアイを予防するためには、ご家庭で以下のような工夫を取り入れることが大切です。

 

・加湿器を使用し、乾燥を防ぐ
・エアコンの風が直接当たらない場所で過ごす
・目やにを優しく拭き取り、清潔を保つ

 

こうした日常の工夫は、治療効果を高めるうえでとても大切です。

 

まとめ

ドライアイは命に関わる病気ではないものの、視力や生活の質に大きく影響することがあります。そのため、早期に異変に気づき、継続したケアと適切な治療を行うことで、多くの犬や猫が快適に過ごせるようになります。

なお、当院では眼科専用機器を用いて正確に状態を評価し、飼い主様から丁寧にお話を伺いながら診療を進めています。また、点眼薬や軟膏の使い方についてもわかりやすくご説明し、再発を防ぐための生活環境づくりまで含めてサポートを行っております。

「目がしょぼしょぼしている」「涙の量が気になる」など、どんな小さな症状でも気軽にご相談ください。早めの受診が、愛犬や愛猫の大切な目を守る第一歩になります。

 

 

当院の眼科診療の詳細はこちらのページをご覧ください

 

 

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