「最近、愛犬が夜もかゆがって眠れない」「皮膚が赤くなっているけれど、原因がわからない」といったお悩みを感じたことはありませんか？
皮膚のトラブルは犬に非常に多く見られる症状で、なかでも慢性的なかゆみを伴う「アトピー性皮膚炎」は、飼い主様にとって心配の種になりやすい病気のひとつです。
アトピーは人だけでなく、犬にも同様のメカニズムで発症すると報告されています。かゆみや皮膚の炎症が続くこの病気は、完治を目指すというよりも、いかに症状をコントロールして良い状態を保ち続けられるかが大切になります。
そこで今回は犬のアトピー性皮膚炎について、原因や症状、当院で行っている診断・治療方法、そしてご家庭でできるケアなどをご紹介します。
■目次
1.犬のアトピー性皮膚炎とは？
2.症状
3.診断方法と当院のアプローチ
4.治療方法
5.ご家庭でできるケアと予防の工夫
6.まとめ
犬のアトピー性皮膚炎とは？
犬のアトピー性皮膚炎は、慢性的なかゆみや皮膚の炎症が続く皮膚疾患で、比較的若い年齢（生後6か月～3歳ごろ）から発症することが多い病気です。皮膚のバリア機能が低下していることで、アレルゲン（アレルギーの原因物質）が体内に侵入しやすくなり、免疫反応が過剰に働いて炎症を引き起こします。
アレルゲンには、花粉、ハウスダスト、カビやノミの唾液など、日常生活の中に存在するさまざまなものが含まれます。また、食事に含まれるたんぱく質や添加物などが関係する場合もあり、こうした外的要因や体質が複雑に関わり合って症状が悪化することもあります。そのため、単純に一つの原因を取り除くだけでは改善が難しい場合も少なくありません。
また、アトピー性皮膚炎で現れる「かゆみ」は、命に関わるような症状ではありませんが、油断は禁物です。強いかゆみや皮膚の炎症によって犬はストレスを感じてしまい、QOL（生活の質）を大きく損なうこともあります。
症状
犬のアトピー性皮膚炎では、以下のような症状が見られます。
・かゆみ（特に耳、顔、足先、脇の下、おなか、尾の付け根、股など）
・皮膚の赤み
・脱毛
・耳の炎症（外耳炎など）
・過剰な舐め壊し（自傷行為）
また、季節の変わり目（特に春や秋）には症状が悪化することが多く、気候の変動や花粉の飛散量が影響している可能性も考えられます。
さらに、かきむしった部分に細菌が感染し、皮膚が膿んだり、においが強くなったりする「二次感染」が起こることもあります。このような状態になると治療が長引きやすくなるため、症状が出始めた段階で早めに動物病院を受診することが重要です。
診断方法と当院のアプローチ
犬の皮膚にかゆみが出る原因は多岐にわたるため、アトピー性皮膚炎と診断するには、他の皮膚病との鑑別が非常に重要です。ノミやダニなどの寄生虫による皮膚炎、細菌や真菌の感染症、さらには食物アレルギーも似たような症状を引き起こします。
当院では以下のような検査を組み合わせて、丁寧に診断を行います。
◆皮膚掻爬検査
皮膚をこすって寄生虫、真菌や細菌などを顕微鏡で確認します。
◆抜毛検査
抜いた被毛を観察して寄生虫や皮膚の異常を調べます。
◆アレルギー検査
血液検査で、花粉、ハウスダストや特定の食物などに対する反応を調べます。
◆皮膚生検
皮膚の一部を採取し、病理検査を通してより詳細に病変を解析します。
このように、当院ではひとつの検査結果だけに頼らず、複数の検査を総合的に判断することで、正確な診断につなげています。また、皮膚科に力を入れており、他院からのセカンドオピニオンのご相談も多く寄せられています。これまでの経過や現在の状態を丁寧に伺いながら、的確な診断と対応を心がけています。
何かわからないことがありましたら、お気軽にご相談ください。
治療方法
アトピー性皮膚炎の治療には、いくつかの選択肢がありますが、どの治療法も「継続的に症状を抑えること」が目的です。そのため、それぞれの状態に応じて治療内容を柔軟に組み合わせていく必要があります。
当院で行っている主な治療方法は以下の通りです。
◆内服薬
抗ヒスタミン薬や免疫調整薬などを用いて、かゆみや炎症をコントロールします。
◆注射薬
インターロイキン阻害薬など、長期間効果が持続する薬剤もあります。
◆外用薬
ステロイド外用薬や保湿剤を使用し、皮膚のバリア機能を補助します。
◆スキンケア
専用のシャンプーによる薬浴（院内トリミング施設でも行っています）や保湿剤によって皮膚の環境を整えるケアも欠かせません。
ご家庭でできるケアと予防の工夫
動物病院での治療に加えて、ご家庭でのケアを取り入れることで、犬の生活の質をより高めることができます。特に以下のような点に注意するとよいでしょう。
＜食事管理＞
アレルギー対応フードを取り入れることや、栄養バランスに配慮した食事を継続することで、皮膚の健康をサポートします。フードの変更は獣医師と相談のうえで行ってください。
＜生活環境の整備＞
こまめな掃除でハウスダストを減らすとともに、空気清浄機の活用や花粉の時期の換気対策なども効果的です。
＜定期的な通院と早期相談＞
状態に応じたお薬の調整や、新たな治療選択肢の導入が可能になるため、症状が軽いうちからの通院・相談をおすすめしています。
犬の体調や皮膚の状態は日々変化するため、異変を感じた際には早めに相談することが、症状の悪化を防ぐうえで大切です。
まとめ
犬のアトピー性皮膚炎は、飼い主様と動物病院が一緒に取り組んでいくべき慢性的な皮膚疾患です。原因の特定から、適切な治療の選択、ご家庭でのケアまで、幅広いアプローチを継続していく必要があります。
当院では、皮膚に関するお悩みに対して、正確な診断と丁寧なカウンセリングを通じて、飼い主様の不安に寄り添う診療を行っております。診察の際には、生活環境や過去の治療歴なども詳しく伺い、それぞれの犬にとって最適な治療プランをご提案しています。
「最近、かゆみがひどくなっている」「もしかしたらアトピーかもしれない」と感じた際には、どうかお一人で悩まずに、まずは当院までご相談ください。皮膚の専門診療に力を入れている当院が、犬の快適な毎日をサポートいたします。
＜参考文献＞
Canine atopic dermatitis: detailed guidelines for diagnosis and allergen identification – PMC (nih.gov)
Treatment of canine atopic dermatitis: 2015 updated guidelines from the International Committee on Allergic Diseases of Animals (ICADA) – PMC (nih.gov)
愛知県名古屋市守山区
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