最近、愛犬や愛猫の「トイレの回数が増えてきた」「何度もトイレに行くのに、少ししか出ていない気がする」「尿の色が赤っぽくなってきた」などの変化に気づいたことはありませんか?
これらの症状は、犬や猫に比較的よく見られる膀胱結石のサインかもしれません。膀胱結石は初期段階で発見し、適切に治療を行えば回復が見込める病気です。しかし、進行すると尿道が詰まり、尿が出なくなる「尿道閉塞」という緊急性の高い状態に陥る危険もあります。
そこで今回は、膀胱結石の基本的な知識から原因、見逃してほしくない症状、検査方法・治療の流れ、そして再発を防ぐための予防策などを解説します。
■目次
1.膀胱結石ってどんな病気?
2.原因とできやすい条件|食べ物や体質も関係
3.膀胱結石のサインとは?|見逃さないでほしい症状
4.検査と診療の流れ
5.治療方法と手術の選択肢|当院の軟部外科の強み
6.膀胱結石の予防と再発防止|日常生活でできること
7.まとめ|気になるサインは早めに動物病院へ
膀胱結石ってどんな病気?
膀胱結石とは、尿の中に含まれる成分が結晶化して固まり、やがて膀胱内で砂や石のような塊になる病気です。犬や猫では以下のようなタイプの結石がよく見られます。
<ストルバイト結石>
犬と猫の両方によく発生します。特にオス犬で多く、細菌感染によって尿がアルカリ性に傾くことで形成されやすくなります。
<シュウ酸カルシウム結石>
主に猫に多く見られるタイプです。カルシウムやビタミンDを過剰に摂取したり、尿が酸性に傾いたりすると作られやすくなります。
これらは膀胱内に留まっている段階であれば、命に直結することは少ないですが、問題は結石が尿道に移動して詰まってしまった場合です。
この状態を「尿道閉塞」と呼び、特にオスは尿道が細く長いためリスクが高まります。尿が出せなくなると、体内に老廃物がたまり、腎機能の急激な低下や尿毒症などの重篤な症状を引き起こす可能性があります。
原因とできやすい条件|食べ物や体質も関係
膀胱結石ができる背景には、以下のようないくつかの要因が関わっています。
<食べ物>
ミネラルバランスが偏った食事を続けると、尿中の結晶成分が増加し、結石ができやすくなります。
<飲水量の不足>
水分摂取量が少ないと、尿が濃縮されて結晶が形成されやすくなります。
<犬種・猫種>
犬では、ミニチュア・シュナウザーやヨークシャー・テリア、ダルメシアンなど、結石ができやすい犬種が知られています。猫では品種による差は明確には解明されていませんが、再発を繰り返す傾向が見られることがあります。
<飼育環境やストレス>
特にトイレの環境が重要です。トイレの場所、数、材質やいかに清潔にされているかが愛犬や愛猫にとって好ましくない場合、排尿を我慢してしまい、結果的に膀胱内に尿が長時間とどまって結石ができやすくなります。
これらのリスクを減らすためには、食事内容や水分摂取量を見直したり、ストレスの少ない快適な環境を整えたりすることが効果的です。
膀胱結石のサインとは?|見逃さないでほしい症状
膀胱結石ができると、以下のような症状が見られることがあります。
・頻繁に排尿しようとする
・尿に血が混じる(血尿)
・排尿時に痛がる、鳴くなどの仕草をする
・何度も排尿姿勢をとるが、ほとんど出ない
・ポタポタと尿が少しずつしか出ない
・まったく尿が出ない
これらのサインは、膀胱に異常があることを示す重要な手がかりです。特に尿道閉塞に進行すると、腎臓に負担がかかり、命に関わる状態へと急激に悪化したり、時には大手術が必要になったりする恐れがあります。そのため、少しでも異変を感じた際には、できるだけ早く動物病院で診察を受けるようにしましょう。
検査と診療の流れ
当院では、膀胱結石の診断にあたって以下のような流れで検査を実施します。
①問診・身体検査
日頃の食事内容や飲水量、排尿時の様子などを詳しくお伺いし、腹部の触診などを通じて膀胱の張り具合なども確認します。
②尿検査
尿に含まれる結晶や細菌、pHの変化などを調べ、結石の種類や感染の有無を判断します。
③画像検査(レントゲン・超音波)
結石の存在や数、大きさ、位置などを視覚的に把握します。
④血液検査
腎機能や全身状態の評価のために、血液中の数値をチェックします。
当院では、これらの検査結果をもとに総合的に判断し、最適な治療法をご提案しています。また、他の動物病院からのセカンドオピニオンも積極的に受け付けており、飼い主様が安心して治療に進めるようサポートしています。
なにか分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。
治療方法と手術の選択肢|当院の軟部外科の強み
膀胱結石の治療は、結石の種類や大きさ、症状の進行度によって異なります。主な治療方法は以下の通りです。
<内科療法(食事療法)>
ストルバイト結石など、食事によって溶解が可能な結石がある場合は、pHやミネラルバランスを整えた療法食を用いて経過を観察します。
<外科療法(手術)>
結石が大きい場合や、内科的な対応が難しい場合、また尿道閉塞を起こしている場合には、手術が必要となることがあります。膀胱内の結石に対しては「膀胱切開術」により摘出を行います。尿道に詰まった結石には「カテーテル処置」によって詰まりを解除する処置を行います。
当院では、軟部外科に力を入れており、膀胱切開術をはじめとした高度な外科手術の経験も豊富です。最新の検査機器と手術設備を完備しており、安全性を第一に考えた医療を提供しています。
手術に対して不安を感じる飼い主様には、事前にしっかりとした説明を行い、ご理解いただいたうえで治療を進めるよう心がけています。
膀胱結石の予防と再発防止|日常生活でできること
膀胱結石は、一度治療しても再発する可能性があるため、日常の予防と再発防止が非常に重要です。飼い主様に心がけていただきたい点は、以下の通りです。
・水分を十分に摂らせる工夫をする
・尿路ケアに配慮したバランスの取れた食事を与える
・トイレの環境を清潔で快適に保つ
・定期的に尿検査を行い、異常がないかチェックする
これらの対策に加え、日々の観察の中で排尿の変化や異変に早期に気づくことが、再発を防ぐ鍵となります。飼い主様の小さな「気づき」が、大きなトラブルを未然に防ぐきっかけになるのです。
まとめ|気になるサインは早めに動物病院へ
犬や猫の膀胱結石は見逃されがちですが、放置すると命にかかわる可能性のある病気です。しかし、早期に気づいて適切に対応すれば、治療の選択肢は広がります。
そのため、愛犬や愛猫の「尿の回数が増えた」「尿が赤い」「排尿時に鳴く」などのサインが見られた場合には、お早めにご相談ください。
当院では、正確な診断と豊富な治療実績をもとに、飼い主様と愛犬や愛猫に対して、安心いただける医療を提供しております。膀胱結石が疑われる際や再発が心配な方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
<参考文献>
Stones in cats and dogs: What can be learnt from them? – PMC (nih.gov)
愛知県名古屋市守山区
犬や猫、うさぎ、小鳥、ハムスター、フェレットなどの幅広い動物の診療を行う動物病院
『小幡緑地どうぶつ病院』
TEL : 052-778-9377





