診療科目
Soft tissue surgery
軟部外科では、骨や関節以外の体のさまざまな部位に関わる手術を行っています。具体的には、肝臓や腎臓、膀胱、消化管などの内臓の病気に対応しており、これらは進行するまでこれといった症状が現れなかったり、急激に悪化したりするため、早めの対応が非常に重要です。
当院では、血液検査や尿検査、X線検査、超音波検査、CT造影検査などを活用し、正確な診断を心がけております。手術に対して不安を感じる飼い主様も多いかと思いますが、当院では最新鋭の機器を設置しており、できる限り負担の少ない安全な手術を目指しております。
また、神経外科や胸部外科など高度な治療が必要なケースにも対応できるよう、器具や体制を整えております。まずはどういった治療が必要なのか確かめるためにも、当院の軟部外科までご相談ください。
Typical diseases
門脈体循環シャントは、腸から肝臓へ向かう血液が、本来通るべき肝臓を通らず、異常な血管を介して全身に流れてしまう先天性の病気です。その結果、老廃物や毒素が体内に蓄積し、嘔吐・下痢・食欲不振・成長不良・ふらつきなど、様々な消化器・神経症状を引き起こします。特に小型犬に多く、生後数ヶ月で症状が現れることが多い疾患です。
原因は生まれつきの血管異常で、診断には血液検査やCT検査などが必要です。軽度であれば食事療法や薬で管理できますが、根本治療には手術でシャント血管を閉鎖する必要があります。当院では手術による治療実績があり、術後の予後も良好です。早期に発見し、適切な対応を行うことで、健康な生活を取り戻すことが可能な病気です。
胆嚢粘液嚢腫は、犬にみられる胆嚢の疾患で、胆汁がゼリー状に固まり、胆嚢の中に異常に蓄積してしまう病気です。初期にはほとんど症状が出ないことが多く、健康診断や別の検査で偶然見つかるケースも少なくありません。しかし、進行すると胆嚢が大きく腫れたり、破裂して腹膜炎を引き起こすことがあり、命に関わる重篤な状態になる可能性があります。特に中高齢の犬で注意が必要な疾患のひとつです。
胆嚢粘液嚢腫の明確な原因はまだ解明されていませんが、高脂血症や内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群、糖尿病など)との関連が指摘されています。また、シェットランド・シープドッグやミニチュア・シュナウザー、アメリカン・コッカー・スパニエルなどの犬種では発症リスクが高いとされています。
治療方針は病気の進行度によって異なります。軽度で症状がない場合は、利胆剤や食事療法による内科的治療と定期的な経過観察を行います。一方、症状が出ている場合や胆嚢破裂のリスクが高いと判断される場合には、外科手術による胆嚢摘出が必要になることがあります。胆嚢が破裂する前に適切なタイミングで治療を行うことが、予後を大きく左右します。
日頃から食欲や元気の変化に注意し、早めの受診と定期検査を心がけることが大切です。
膀胱結石は、犬や猫の尿に含まれる成分が結晶化し、砂や石のような塊となって膀胱内にたまる病気です。排尿回数が増える、少量しか尿が出ない、血尿が見られるなどの症状が現れることがあり、犬猫ともに比較的よくみられる疾患です。
膀胱内に結石があるだけでは重篤にならないこともありますが、結石が尿道に詰まる「尿道閉塞」を起こすと、急激に全身状態が悪化し、命に関わる緊急疾患となるため、早期の対応が重要です。
膀胱結石の発症には、食事内容や水分摂取量、尿のpH、体質などが関与しています。特にストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石が代表的で、犬種や猫の個体差によってできやすいタイプが異なります。また、飲水量が少ないことや、排尿を我慢しやすい環境も結石形成のリスクを高めます。
治療は結石の種類や大きさ、症状の程度によって異なります。食事療法によって溶解が期待できる結石の場合は、内科的治療と定期的な検査で経過を観察します。一方、結石が大きい場合や尿道閉塞を起こしている場合には、外科手術による摘出が必要となることがあります。
膀胱結石は再発しやすい病気でもあるため、治療後も食事管理や水分摂取、定期的な尿検査を行い、再発予防に取り組むことが大切です。
子宮蓄膿症は、犬や猫の子宮内に膿がたまる病気で、主に避妊手術を受けていない中高齢のメスに多く見られます。初期には元気や食欲の低下、多飲多尿など、体調不良と区別がつきにくい症状しか現れないこともありますが、進行すると子宮が破裂し、腹膜炎や敗血症を引き起こすなど、命に関わる重篤な状態になることがあります。進行が早く、緊急対応が必要となることが多いため、早期発見と迅速な治療が非常に重要な病気です。
子宮蓄膿症は、発情後に分泌される女性ホルモン(プロゲステロン)の影響で子宮内膜が厚くなり、そこに細菌(主に大腸菌)が感染することで発症します。避妊手術を行っていない場合、発情を繰り返すごとにリスクが高まることが知られています。外陰部から膿が出る「開放性」と、外見上分泌物が見られず重症化しやすい「閉鎖性」があり、特に閉鎖性は気づかれにくいため注意が必要です。
治療の基本は、卵巣と子宮を摘出する外科手術(卵巣子宮全摘出術)です。全身状態によっては、内科治療で体調を安定させてから手術を行うこともありますが、放置すると急激に悪化するため、診断後は速やかな対応が求められます。
予防としては、若齢期での避妊手術が最も有効であり、子宮蓄膿症だけでなく、乳腺腫瘍など他の病気の予防にもつながります。